約 730,124 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2563.html
ここには「美咲さんと先生」のいろいろな設定などを書きたいと思います。 人物 「先生」 :名字は竹田。齢四十に近い男性。常に敬語で話すために真面目な人間かと思いきや、中身は変人である。だが、オリジナル装備製作やプログラムの組み立て、神姫のメンテナンス等をこなせることからかなりの知識人であると思われる。株式会社「カサハラテクニカル」の神姫用玩具開発部門の主任。結果重視の会社であるため、特定の拘束時間はないが出勤日数は二十日間以上と決められている。まれに一日五分しか会社にいないこともあるらしい。フブキタイプ・美咲のマスター。メガネはかけていない。 「カエデ」 :本名・一条 楓(いちじょう かえで)。どこにでもいる普通のOL。薄給から何とかやりくりして神姫を楽しんでいる。会社の休日は火曜、日曜。アーンヴァルタイプ・エルスのマスター。幸薄感に溢れている。 「ケイゴ」 :本名・柏木 圭吾(かしわぎ けいご)。ニートに近いフリーター。親が甘いので神姫もほぼ親の金で楽しんでいる。ただ、嫌味のないさわやかな性格であるため、あまり疎まれてはいない。触手好き。マリーセレスタイプ・ステルヴィアのマスター。ぽっちゃり系。 「エンドウ」 :本名・遠藤 健太郎(えんどう けんたろう)。大学生。先生を師として仰ぎ、尊敬している。アルバイトをしながら大学生活と神姫を満喫している。セカンドリーグのトップクラスに在籍してるので、金銭的に余裕がある。大学生特有の自由時間を生かして全国各地を回り武者修行をしている。ウェルクストラタイプ・『弾丸』のフェフィーのマスター。精神面は幼め。 「ケイイチ」 :本名・東雲 慶一(しののめ けいいち)。高校生。四人の神姫を維持するための電気代や経費を稼ぐため、言うことをあまり聞かない姉妹を引き連れ日々放課後バトルに明け暮れる。バトルセンスはピカイチであり、特に多対多でのチーム戦や混戦においてその真価を発揮するタクティカルコマンダー。今現在は親元を離れて一人暮らしであるが、騒がしい毎日を送っている。アルトレーネタイプ・イール、マオチャオタイプ・アルマ、アークタイプ・マリネ、アルトアイネスタイプ・ネムのマスター。女難の相ならぬ神姫難の相が出ている。 「タチバナ」 :本名・立花 菊子(たちばな きくこ)。先生と同じ「カサハラテクニカル」の社員。神姫武装開発部門の若き主任(年齢は二十代中盤らしい)。立花財閥のお嬢様だが神姫に没頭するあまりに勘当される。彼女が開発する武装はどれも派手さや見た目に重点を置いたものであるが、それに詰め込めるだけの性能を詰め込んだ、高性能だがピーキーなものがほとんど。故にカサハラ製の武装は目立ちたがりの玄人が好む傾向にある。苦いものが大嫌いで、タバコは吸えないがくわえるのは好き。ジュビジータイプ・ホムンクルス、他「カサハラテクニカル」の社員神姫のマスター。残念美人。 「ムースのマスター」 :本名・柊 麻昼(ひいらぎ まひる)。女子高生。明るく元気な女子高生だが、時々ブツブツと独り言を呟いてはニヤリと笑うちょっとアレな子。ゲームの類が大好きで、それが高じて武装神姫に手を出した。友人に機械に強い人が居り、武装の製作を委託している。 神姫 「美咲さん」 フブキタイプ。初期に販売された神姫。比較的角ばった作りの初期素体のままなことをちょっと気にしている。より人間の少女らしい丸みを帯びた新型に換装することを先生に申し出たが、「今のままがいいです」と却下された。どんな武装も使いこなし、どんな間合いにも対応するオールラウンダー。比較的高次元な戦いにも対応できるが、並列処理能力は低いので臨機応変には戦えない。先生の的確な指示が勝利の鍵。 「エルス」 アーンヴァルMk-2タイプ。美咲のギターの副作用の媚薬プログラムのせいでおかしくなったと皆は思っているが、実は初めから百合属性。今までは抑えていたが、プログラムによって解放されただけ。アーンヴァルの標準通り飛行特化の射撃重視装備を施されている。回避以外特に目立った性能はないバランス型。マスターであるカエデ自身があまりいいセンスではないため、実力はサードリーグクラス。だが本人達は気にしていない。 「ステルヴィア」 マリーセレスタイプ。自称地区一の触手使い。マリーセレスの標準装備の触手をカスタマイズし長くしている。触手マイスターになるのが夢。装備はマリーセレスの標準装備にカスタマイズした触手のみの近接格闘型である為、飛行型の敵には弱い。が、地上戦ならばかなりの戦闘力を見せる。マスターであるケイゴはステルヴィアに指示を与えるより、ステルヴィアに敗北しチョメチョメされる相手を見ることに力を注いでいるらしい。 「フェフィー」 ウェルクストラタイプ。『弾丸』の二つ名をもつ。一度CSCを破損し交換されているため、今のフェフィーは記憶を継承した二代目である。コアとCSCの相性が悪かったようで、知らぬ相手には無愛想になり、BL好きになってしまった。さらに、全ての神姫がBL好きだと思い込んでいる為、知り合った神姫に普通にBL話を持ち掛け、どん引きされるのだそうだ。故に友好関係はあまりよろしくない。格闘特化のCSCに合わせて、装備も格闘特化型である。足に備えたバッタの足のようなシリンダーは瞬発力を増加させるための装置で、バネのように足を弾くため高機動用モーターよりもバッテリーの消耗は低い。が、素体への反動は大きい為、こまめに整備をしないと素体自体が破損する恐れがある代物。手足に装備している武装は、エネルギーを内部にて圧縮し、攻撃時に解放させることにより威力を数十倍させることができる。冷却装置は付いているが、すぐに熱を持つので一度の解放ごとに表面を開き熱を逃がさなければならない。スカートバーニアは加速力増加と空中での姿勢制御を兼ねている高出力低持続性の小型バーニアである。内部には小型のエネルギータンクを備え、戦闘時の稼働時間を僅かに延長させている。ちなみにこれは本戦仕様であり、軽い手合わせ等の手加減用装備も別に存在している。 「イール」 アルトレーネタイプ。仲良し四姉妹(笑)の長女。標準のアルトレーネの性格であり、マスターであるケイイチに従順である。が、熱しやすい性格で「牛丼」と呼ばれることを何よりも嫌い、頭に血が上ると冷静さを欠く。武装は近接特化で、紅黒のダークカラーに塗装されたアルトレーネの標準アーマーに七つの細剣を装備するのみ。一対一では勝率はあまり高くないが、多対多の混戦時には無類の強さを誇る。その強さの秘密はアーマーにあるらしい。待て次回!(←未定)末妹であるネムが可愛くてしょうがない。 「アルマ」 マオチャオタイプ。仲良し四姉妹(笑)の次女。性格は捻じ曲がっており、常に他人に突っかかる。ケイイチに起動させられたわけではなく、色々あって人の手から手に渡り歩き、最終的にケイイチのところにたどり着いた。武装は紅黒のダークカラーな標準装甲にカスタマイズされたドリルとレーザー刃の切れ味抜群なレーザーソー。攻撃力はとても高く、さらにマオチャオ特有の機動力の高さで地元神姫センターのトップに君臨する。特に妹のマリネとのコンビは強力で、一部ではそのカラーリングと強さに『夕闇の旋風』と呼ばれている。普通のマオチャオと違って辛いものを好む。末妹であるネムにデレデレである。 アルマ語講座。 「~無い」という否定形は「~にゃー」となる。例「馬鹿じゃないよ」→「馬鹿じゃにゃーよ」 一人称・二人称・三人称。「おまえ」は「おみゃー」。「私」は「あちし」。「あいつ」は「きゃつ」。「こいつ」は「こやつ」 語尾ににゃーをつけるかどうかは気分らしい。「な」を「にゃ」にするかどうかも気分らしい。 「マリネ」 アークタイプ。仲良し四姉妹(笑)の三女。性格は粗暴。一人称は俺。恐ろしく口が汚く、言語矯正プログラムによって規制音が鳴り響く。普段マスターであるケイイチの言うことには馬耳東風だが、バトルの時には忠実である。武装は紅黒のダークカラーなイーダのトライクのカスタム品である。走行可能ギリギリまで積載した火器による砲撃が得意で、地元神姫センターで二位の実力を誇る。アルマとのタッグでは負け知らずで五十連勝以上はしているらしい。末妹であるネムにゾッコンである。 「ネム」 アルトアイネスタイプ。仲良し四姉妹(笑)の四女。仲良し四姉妹(笑)が仲良しでいられるのは彼女のおかげ。性格はかなり幼く甘えん坊で泣き虫ではあるが、芯は強い。武装は紅黒のダークカラーで姉妹たちとおそろいになるように塗りなおされているが、彼女はバトルすること自体は嫌なので装備したことは無い。強いて言うなら、相手の母性や保護欲を掻き立てるその性格が最大の武器。実質一家の支配者だが自他ともに自覚はない。 「ムース」 ストラーフタイプ。クールな印象をあたえるしゃべり方をするが、頭の足りない子。普段から黒いロングコートを愛用している。武装はストラーフの標準装備である強化脚とサブアームに、昔のゲームの主人公が使用していたケルベロスと呼ばれる大型二丁拳銃とデスホーラーという火器満載の棺桶を装備する。それらの火器を自在に使いこなし、セカンドリーグの上位に在籍しているが、そんな装備よりも歌のほうがより強力で凶悪である。 「ホムンクルス」 ジュビジータイプ。派手好きで自意識過剰で自信過剰で自己中心的でポジティブでハッタリ屋。ファーストリーグランカーだが順位は高くないらしい。詳しい記述は未登場なので避ける。 その他 「ギタにゃん」(CV若本規夫 推奨) 『ニャンたるロック』ギター担当にしてリーダー。音楽に対して固有の価値観を持ち、それにそぐわないものには容赦がない。 「にゃんベース」(CV千葉繁 推奨) 『ニャンたるロック』ベース担当。ノリがいいともっぱらの評判。 「ぬこドラム」(CV大塚明夫 推奨) 『ニャンたるロック』ドラム担当。性欲はもてあましてない。 「にゃんセイザー」(CV子安武人 推奨) 『ニャンたるロック』シンセサイザー担当。超クール。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2150.html
ウサギのナミダ ACT 1-25 ◆ 高村がCSCをセットし、目覚めたその日からすでに、雪華の目標はバトルロンドで頂点に立つことだった。 高村自身もバトルロンドに参戦するつもりでいた。 しかも相当本気でやるつもりでいたから、有名な神姫ショップにフルチューンを依頼し、素体ではほぼ最高レベルのパフォーマンスが出せるアーンヴァルを手にした。 素体が神姫の性格に影響したのか、CSCの組み合わせの問題なのかはわからない。 目覚めた雪華は誇り高く、バトルに勝利することを一番とした。 ただし、卑怯な振る舞いはしない。あくまで正々堂々、実力で勝つ。それが雪華の誇りであった。 しかし、それは茨の道だ。どんな神姫でも不得手な相手はいる。卑怯な戦い方をする奴もいる。真っ向勝負で勝とうというのは、なかなか難しい。 それでも、雪華は卑怯な真似は一切しなかった。 高村が感心するのは、雪華が努力を惜しまない姿勢だった。 フルチューンしたボディなら、性能差で渡り合うことができる。武装を選べば、並の神姫に負けることはない。 にもかかわらず、雪華はそれをよしとしなかった。 とにかく基本動作の反復練習を飽きることなく、今も続けている。 時には、近接武器だけ、遠距離狙撃用ライフルだけでバトルに出て、納得いくまで実戦経験を積むこともあった。 才能と努力。その二つが結実して、類稀な強さを手にした。 そして、どんな相手とでも真っ向勝負で勝利を収めてきた。 しかし。 いつの頃からだろう。 雪華は自らの成長に限界を感じていた。 雪華は大会に出て頂点に立つことを望んでいる。 故に、戦う相手は大会出場を目的とした神姫が多くなる。 だが、大会で勝てる神姫というのは、パターンが限られて似通ってくるのだ。 戦闘がマンネリ化してきた、とでも言おうか。 対戦するどの相手も、どこかで戦ったことがある武装神姫ばかりに見えるようになった。 もちろん、強い神姫もいる。 だが、想定の範囲内での攻撃しかしてこない。 限られた範囲での技を極め、純度を増す、というのも一つの強さなのだろう。 しかし、雪華はその範囲内での強さでは、もう限界を感じていた。 自分はこれ以上強くなれないのか。 そう思ったとき、雪華は焦りさえ覚えた。 彼女は頂点を極めるため、強くならなければならない。 どんな攻防にも勝てる強さを身につけなければ。 雪華はそれを戦闘での「引き出し」の多さに求めた。 それは大会出場の神姫とばかり対戦していては得られないもの。 大会にエントリーしていなくても、名の通った武装神姫はたくさんいる。 そうした神姫を求めて、雪華と高村はあちこちの神姫センターやゲームセンターに足を運んだ。 まるで武者修行だ。 だが、その武者修行はあたりだった。 思いもよらない変わり種の、強い神姫たちと出会い、対戦できた。 その対戦に勝つ度に、自分が少しづつ強くなっていることを実感する。 そして今日もまた、目の前に特別な神姫がいる。 ティアとの対戦は、今の雪華にとって、どんなことよりも優先されるべきことだった。 ◆ 「マスター。『レクイエム』の使用許可を」 「……いや、雪華。相手はもう動けそうにもない。『レクイエム』を撃つまでもないじゃないか」 マスターの逡巡する声に、雪華は厳かに告げる。 「いいえ。『ハイスピードバニー』は強敵です。ならば、手抜きは礼を失するというもの。我が最大の攻撃を持って、幕引きとしたく思います」 そう、雪華はティアを「強敵」と認識していた。 大会で出会った多くの神姫でも、ここまで食い下がった相手はほとんどいない。 武装がオリジナルで、見たことのない戦闘スタイルを駆使し、ノーデーターでの対戦であり、相手の得意なフィールドであることを差し引いても、これほど噛み合う対戦になるとは思いもしなかった。 雪華の胸は昂揚で沸き立っていた。 強敵と戦えることの喜び。そして、その戦いに勝利することで、私はまた一つ強くなる。 マスターの、あきらめたようなため息が、聴覚センサーに届く。 「……わかった。追加パーツ転送。『レクイエム』使用許可」 高村の声と共に、サイドボードから追加のパーツが転送される。 それと同時に、黄金の錫杖が変形する。 ビームガンを中心に再構成された錫杖は、航空機を思わせるシルエットに変わる。 追加のパーツの支持用のハンドルがドッキングする。 雪華の前に現れたのは、高出力のビームキャノンだった。 ノーマルのアーンヴァル・タイプとは異なる、鳥状の翼が大きく開く。 翼の縁が金色にまばゆく輝き始めた。 エネルギーの奔流が翼を伝い、雪華を通じて、ビームキャノン『レクイエム』に流れ込む。 溢れ出るエネルギーが光の粒子となって、雪華の周りを舞っている。 まるで高位の天使が光臨する様のように、観客の目に映った。 ■ 痛みは、わたしにとって、諦めを促す信号だ。 お店にいたとき、痛みや苦しみを受けると、「諦める」ことでそれらを適当に処理し、やりすごしてきた。 そうしなければ、耐えることができなかった、あそこでは。 落下の衝撃で体中がきしむ。 腹部には熱い痛みがある。雪華さんに撃たれたのだ。 わたしはお腹を抱えてうずくまり、その痛みに耐える。 ……もう、諦めてもいいですか? わたしは必死に戦ったけれど。 もう、立ち上がれません。 だって、痛いんです。 とてもとても痛いんです、体中が痛いんです。 痛くて痛くて痛くて泣いてしまいそうです。 だから、諦めてしまえば……。 心の中から、別のわたしが声を上げる。 ……何を? 何を諦めるというの。 この試合……? 負けてもいいでしょう? だって相手は全国大会の優勝候補なんだもの。 わたしはこんなに痛い思いをしているんだから……。 別のわたしは、何も言わず、ある画像を認識させた。 閉じたわたしの瞼に映る人の顔。 ……マスター。 わたしは、はっとなり、瞳を見開く。 思い出す。 あの時の、マスターの冷たい眼差しを。 マスターの右手に巻かれた包帯を。 マスターが手を差し出したときの、震えた声を。 ネットの掲示板に書かれた悪意の言葉を読んだときの気持ちを。 あのときの、耐え難い、心の痛みを。 いいはずない。 負けていいはずない。 諦めていいはずがない! わたしは拳を握り、地面の砂をぎゅっと掴んだ。 痛い? 何が? 撃たれたお腹が? 打ちつけられた身体が? こんなもの。 あの時の心の痛みに比べれば。 どれほどのものだっていうの!! そう、わたしは誓った。 すべてを賭けて、マスターに尽くすと。 マスターがわたしにしてくれたように、わたしもマスターのためにすべてを賭けると。 まだわたしは、このバトルですべてを賭けてはいない。 歯を食いしばる。 両腕をつっぱると、上半身をわずかに持ち上げた。 わたしはまだ走れる。 わたしにはまだ技がある。 マスターにも知らせていない、とっておきの技。 いま、ここで使う。 マスターに勝利を捧げるために。 ◆ 雪華はティアに照準を定める。 ティアは未だ動かない。うずくまったままだ。 先日の全国大会地区予選でも、使用することのなかった最大の技。 今こそ放とう。 ここで出会えた未知の強敵に、最大の敬意を払って。 「レクイエム……シュートッ!!」 雪華の叫びとともに、ビームキャノン『レクイエム』から虹色の光芒が放たれた。 埃にまみれたストリートを薙ぎ払う。 次の瞬間、メインストリートに光の絨毯が敷き詰められた。 放出されたエネルギーの光芒は、地面に着弾すると、無数の光弾になって炸裂した。 弾け飛ぶ無数の小さな光弾は、触れたものに確実な破壊をもたらす。 炸裂音が幾重にも重なり、轟音となって、廃墟の街に響き渡る。 はじけた光弾は、さらに細かい粒子となり、一瞬舞い踊る。 それによって、薙ぎ払われた攻撃範囲内のストリートは、光で膨れ上がった。 その下にあるものは完全なる破壊。 まさに鎮魂歌……その名に恥じない、美しくも無慈悲な必殺攻撃。 あまりの攻撃の美しさに、ギャラリーから感嘆のため息が漏れた。 虎実はきつく目を閉じて、観戦用の大型ディスプレイから顔を背けた。 「あんなの……かわせっこねぇ……」 ミスティは手で口元を押さえながら呟く。 「そこまで……する必要が……あるっていうの、クイーン……」 菜々子と大城は、厳しい表情のまま、大型ディスプレイから目が離せないでいる。 四人の少女たちも、口元を押さえて見入っている。 三強でさえ、呆けた表情でディスプレイを見入るばかりだ。 誰もが雪華の勝利を確信していた。 それは、雪華本人も、マスターである高村でさえも例外ではなかった。 □ そのとき、状況を正しく理解できていたのは、ティア本人だけであったかもしれない。 俺は信じられない思いでモバイルPCの画面を凝視していた。 自分を取り巻くギャラリーの気配さえ遠く感じる。 「……ティア……おまえ……」 ティアをモニターしているモバイルPCには、すべて限界を突破した数値が映し出され、画面は真っ赤に染まっていた。 そして、いまも刻々と数値は上昇を続けている。 ◆ 地表を覆っていた光の靄が晴れる。 風が砂煙を吹き払っていく。 後に残されたのは破壊の爪痕。 攻撃範囲内にあったものは、古ぼけた建物であれ、乾いたアスファルトであれ、何もかもが細かな瓦礫と化している。 『アーンヴァル・クイーン』雪華は、ゆっくりと地表に下降していく。 『レクイエム』は、彼女のエネルギーを大半使用する、まさに最終の必殺技だ。 アーンヴァルの飛行能力も、エネルギー低下の影響を否めない。 だからこそ、乱発できる技ではないのだ。 勝利を確実にするための必殺攻撃……それが『レクイエム』だった。 降下しながら、雪華は勝利を確認するため、自らの破壊の跡に目を向ける。 ……だがしかし、そこにティアの残骸は見受けられなかった。 雪華は怪訝な顔をした。 身動きの取れないティアが、あの攻撃をかわしたとは思えない。 瓦礫の下に埋まってしまったのだろうか? それもあるかもしれない。 だが、おかしい。 それならばなぜ、ジャッジAIから勝利のコールがなされない? あまりに低い一つの可能性に、雪華の思考が至るより早く。 「雪華、上だっ!!」 マスターの短い注意を、雪華が認識するよりも早く。 ティアの鋭い膝蹴りが、雪華の背中に降ってきた。 次へ> トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/twitterfatetrpg/pages/296.html
サーヴァント 【クラス】ランサー 【真名】ロンギヌス〔オルタ〕 【容姿】身の丈に合わない巨大な槍を持ったのじゃロリ 【英雄点】45点(ステ30点・スキル15点):令呪1画消費 【HP】40/40 【筋力】EX:8(10) 【耐久】EX:8(10) 【敏捷】C:3 【魔力】A:5 【幸運】D:2 【スキル1】神殺し EX 5:キャラシート作成時、英雄点5を得る。 神性・聖人の特性を保有するサーヴァントに対して物理攻撃と魔術防御時、補正値5を得る。 【スキル2】聖者の血 B 5:交戦フェイズごとに1回まで、先手判定時に自分のHPを(耐久値D6)回復し、付与されているデバフを解除する。 【スキル3】対魔力 A+++ 5:キャラシート作成時、英雄点5を得る。魔術防御時、補正値5を得る。 【宝具】『今、神は磔に処された』(ガイウス・カッシウス・ロンギヌス)1/1 【ランク・種別】D~A++:対軍宝具 【効果】物理攻撃時、相手の前衛全てに攻撃でき、補正値5を得る。 対象が神性の特性を保有する場合、攻撃後、自身のHPを(耐久値D6/2)回復する。 【その他】混沌・悪 人属性
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/304.html
プロローグから時間は多少前後し、光矢は友人Fと共にホビーショップエルゴに居た。まだ彼の胸ポケットは空で、商品の陳列棚を見る目にも少々の呆れが見え隠れしている。 この日は友人Fの公式戦が組まれており、Fの提案によりライブで神姫のすばらしさを語ることに付き合うことになっていた。 「さ、始まるぞ。クリス、存分に暴れてやれ。光矢にも神姫の素晴しさを見せ付けてやれ」 『イエス、マスター』 普段はヘッドセットを着用して、周囲からの雑音を切り離し、マスターと神姫がセットになって戦うのだそうだ。しかしこの日Fは戦闘中継を光矢に全て見せるべく、ヘッドフォンなしで神姫ポッドの前に立っていた。当然、神姫の声は画面横のスピーカーから聞こえてくる。 光矢はFの横に立ち、3つ並んでいる画面の中央、一番大きなセンターディスプレイに目をやった。テロップが次の対戦カードを表示している。 サードリーグ 公式戦 フリッツ V アモーレ田中 クリス S ろべっち 制限時間制 ゴーストタウン 『GO』の文字が表示されると同時に、それまで静けさを保っていたフィールドが一気に加熱した。 砂埃を巻き上げ疾走するのはFのクリス。右は逆手にマチェット、左手にはサブマシンガンを携えたMMSで、頭部は赤いレンズのゴーグルと黒いガスマスクを着用している。頭から生えている(ように見える)細身の剣は、走る速度に比例して広報へと倒れていく。そして、そのシャープなシルエットに全身の黒系塗装が合わさり、疾走する姿は弾丸を彷彿とさせた。 それに対して相手のMMSは、同じく黒い色が特徴的なのだが、そのふいんき(なぜか変換できない)は真逆だった。 黒の生地に白のフリルがあちこちにあしらわれている布製の服をまとい、スカートはふんわりとした膨らみを保ったまま揺れている。頭部には同じくフリル付のカチューシャを装備し、ご丁寧に眼鏡までかけている。『メイド』を意識したその姿は、おおよそ戦闘とは無縁に思えるのだが、手にした黒い傘でクリスの連撃を捌く姿は確かに戦場に居る者の様子を備えていた。 初接敵の接近戦はビビアンに部があった。クリスの繰り出す連撃は尽く『傘』に防がれ、逆に相手はマチェットをいなしてはじいた後に、そのまま流れるような軌道で『傘』を振る。傘の石突の部分は通常のそれとは違い、研ぎ澄まされた刃になっている。近接戦闘を意識して改良された特別製らしい。 クリスの4度目の斬撃を避わしたメイドさんは次に、自分の背後にあった自分の背丈ほどの崩れたレンガの壁を宙返りをしながら飛び越えた。その際、ちらっと笑みを浮かべつつスカートを翻しその裾から何かを放った。 体勢を立て直したクリスが次に見たものは、目の前に落ちてくるボール状の物体。重い金属音を響かせて着地したソレは・・・ 「…手榴弾!?」 慌ててその場を離れるクリスだったが、あまりに唐突だった相手の『反撃』は完全には避け切れなかった。爆発した手榴弾はクリスのゴーグルを砕き、クリスからHUD(ゴーグル上に各種戦況データを示す機能)を奪った。 「ふざけた名前と格好のくせに、やるじゃん……」 初撃の失敗と報復に驚きと焦りを殺しきれないF。その横で光矢は初めて目にする武装神姫の戦いに魅入られ始めていた。 各所パーツにカスタマイズを施しているFの凄さは耳が痛くなるほど聞かされていた上、仮想戦闘プログラムでの画面も見せられていた。その時はまだ神姫に熱くなっているFへの軽い軽蔑があったが、ここでの対戦を見ればそのときのFの言動も理解できる気がしてきた。 クリスの攻撃をかわす相手のメイドは、以前どこかで読んだ漫画の人のようだ。レンガの壁の裏にふわりと着地した瞬間、壁に向けて傘を広げると、爆発で吹き飛んだレンガ片はその盾にはじかれて、本体には埃一つつかない。よく見ると、その傘の持ち手の部分も、通常とは明らかに違う形をしていた。傘の中に折りたたまれていたストックが開き、右の肩に押し付けられると同時にメイドさんはトリガーを引いた。瞬間、二度目の爆発が起きたような音と煙が上がった。ショットガンを花束に仕込むのと同じように、仕込みショットガンとでもいうのだろうか。先ほどの手榴弾といい、暗器をよく使う。 手榴弾によりHUDを失ったクリスは、ショットガンの射撃に反応がわずかに遅れ散弾を避けることができなくなり、やむなく背部のアームを展開し体の前で交差させその場で身構えた。着弾と同時に激しい衝撃が襲い、にわか構えの体勢は脆くも崩され、そのうえアームの隙間を縫ってきた細かな散弾が本体をも削っていく。頭の中をエラーメッセージが叫び、痛覚値が上昇していく。ショック状態にはならないものの、痛覚値を感覚値と切り離すための処理が大きくなり、長時間の戦闘は厳しくなった。 「クリス、物陰で機会を待て。相手に気づかれる前にマチェットを見舞ってやれ!」 『イエス、マスター。時間の余裕はあまりありませんし、早々に決めます』 相手のショットガンの銃声が6発目で止まったことを確認すると、砂埃に紛れて再び駆け出す。しかし、今度の方向は相手ではなくその左手側、無作為に投げ出されたコンテナが積みあがっている陰である。その際、移動の邪魔になると判断し、散弾で削られたアームを棄て去った。 相手のメイドは自らの作り出した砂煙で視界を失ったらしく、クリスがコンテナの陰に走りこんだ後も傘を正面に向けていた。 やがて砂煙が落ち着くと、メイドはゆっくりと傘を構えたまま前進し始めた。クリスの棄てたアームユニットに注意を払いつつ、周囲に気を張りながら臨戦態勢を崩さない。一歩毎に広がる視界を常にチェックしながら……12歩目に差し掛かったときに戦況が動いた。それまで息を殺し、コンテナの陰に隠れていたクリスが、マシンガンを放ちつつメイドの側面に飛び出したのだ。予想していた範囲とはいえ、右手に持った『傘』では防御が間に合わず、体勢を崩しながら後退した。 しかし、本業を接近戦に持つクリスの追撃は中途半端な間合いでは無いのと同等である。クリスは相手の体制が崩れるのを確認すると、左手のサブマシンガンを投げ捨て、代わりに左の太ももにぶら下げていたダガーを抜き取った。そのまま低い体勢を保ったまま、右手のマチェットと交差して傘に切りかかる。相変わらずマチェットは傘の幕を破れないが、左手のダガーは発熱設計になっており、紅くなった刃の触れた部分から一気に傘を切り裂いた。 仕込みショットガンの敗れたメイドはそのまま尻餅をつき、今度は反撃する間もなくマチェットの刃を鼻先に向けられた。 「参りましたわ、ギブアップです」 「…ハァ…ハァ、 中々手強い相手だったよ。アンタ」 * * * 「それを見て、君を買おうと思ったんだ」 「そうだったんですか、すみません気づかなくて……」 「いや、いいんだ。君が戦うの好きじゃないなら強要しないから」 殺風景な部屋で光矢とアーンヴァルの会話が続いていた。 初期起動からすぐ、光矢の見ていた武装神姫のアリーナ中継を見たアーンヴァル型神姫は「自分は争うのは好まない」と言ったのだ。それから二日間は、光矢はリーグのことを話さなかったが、アーンヴァルになぜ自分を買ったのかと聞かれ、今に至る。 「無理に戦うこともないしさ。今もこうしてライブ見てるだけでも……」 「……やります、マスター!」 「ボクは満足だし……え?」 それまで話を黙って聞いていた神姫は突然、声を上げリーグに参戦する意思を述べた。 「でも、この前は戦うのは嫌だって……」 「それはそうですけど……」 何故か顔を赤らめ、目線を泳がせる。手を握ったり指を合わせたり、俗に言う『もじもじポーズ』を取りながら、アーンヴァルは上目遣いで見上げた。 「とにかく!私出たいです。リーグ!その、戦うのは苦手だし、好きじゃないですけど…。ホラ、マスター、私のために武器とか色々作ってくれてますし、試し撃ちも家の中だけだと味気ないし、もしそれで勝てたら万々歳でマスターも私に何かうにうに……じゃなくて。とにかく、出してもらえませんか!?」 あまりに必死な懇願に、しかし自分のやりたかった希望を提案され、光矢は「よし、それじゃぁやってみようか」と答えた。 その翌日、リーグに参戦するに当たって神姫に名前をつける必要があることをFから聞いた光矢は、その日の夜に自分の神姫に名前を贈った。 「クラウ・ソナス。神話に出てくる光の剣で、絶対に負けないっていう由来なんだ」 その後の結果はプロローグでも触れたとおり、2週間経っても未だ勝ち星なしである。 彼らの挑戦はまだ始まったばかりである。 ~続く~
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2307.html
アスカ・シンカロン04 ~審寡~ 「おかしいぞ」 本屋を出た帰り道に立ち寄ったのだ。 繁華街の一角だった事も確か。 なのに。 「無い」 いつも通る道の何処にも、件の骨董屋は見つからない。 「無い訳無いだろう!?」 昨日の帰り道は、特に意識しては居なかった。 それは逆に言えば、何時もと同じ道を通ったからだ。 「なのに、なんで何処にも無いんだよ!?」 繁華街の入り口まで戻り、神姫センターを通って、昨日立ち寄った本屋へと辿り着く。 そして、その帰り道に古びた建物を見つけた筈だった。 「左の方だったんだ、間違いねぇ」 「北斗ちゃん、そっち右なんだよ」 「……」 「……」 「い…、いいんだよ。『こっち』側なのは確実だ!!」 本屋から繁華街の入り口まで戻る道を辿る。 右側と、念の為に反対側も確認しながら、ゆっくりと歩くが、該当する建物に巡り合わぬ内に、繁華街の入り口まで戻ってしまった。 「無いんだよ」 「んな訳無ぇ」 肩の上に腹這いになりながら寛ぐ明日香に、北斗は余裕の無い声で返す。 「なんで無いんだ。この通りなのは絶対に確実だ!!」 「あのさぁ、北斗ちゃん」 「んだよ」 「神姫を取り扱っているお店なら、神姫センターで聞けば分かるんじゃない?」 「……」 ぽん。と一つ手を打って、北斗は神姫センターに向かって走り出した。 「―――無いですねぇ」 大型神姫センターの店長である女性が、パソコンで検索しながらそう応える。 「んな訳無ぇだろ!!」 「でも、この近くで神姫を取り扱っているのは、ココとパソコンショップ、それにおもちゃ屋の3店だけです」 パソコンショップは場所も違うし、独立した大型店舗でどう間違っても骨董屋に間違えるわけが無い。 おもちゃ屋は、北斗も時折ゲームソフトなどを買いに行く行きつけの店だ。そこでもない事は確実だった。 「小さな店でよ、骨董屋みたいな雰囲気なんだ。このすぐ近くの筈なんだよ」 「そう言われましても……」 流石に店長も困った顔をする。 「あの……」 「はい?」 北斗の肩の上から店長に話しかける明日香。 「個人経営の小さな店だと、ココに登録されていない事ってありますか?」 「オーナー登録は必須だし、出荷や、ユーザー管理の観点からも、本社が把握していない小売店なんか存在しないわね」 「そうですか」 とりあえず礼を言って、二人はカウンターを離れる。 しかし、これで八方手詰まり。 こうなって来ると、昨日の記憶を疑う方が正しい気もするが、それが記憶違いでない事は今もポケットの中にある、あの墨で書かれた手書きの説明書が証明している。 「それ以外の可能性ね~」 「北斗ちゃん、携帯貸してほしいんだよ」 「…? どうするんだよ」 「骨董屋さんの検索をするんだよ」 テーブルの上に携帯と明日香を置いてやると、明日香は器用に掌でボタンを押し込みながらその操作を始めた。 「どうだ?」 「う~ん、該当件数3件なんだよ。……でも全部遠いね」 「違うか」 一番近い店でも徒歩で30分以上掛かる。 候補に上げる事は出来そうに無かった。 「…狐にでも化かされたかな?」 冗談めかしてそう言った後、背もたれに寄りかかり、仰け反って転地逆の真後ろを見る北斗。 さかさまの視界に、蝙蝠型ウェスペリオーのCMが流れていた。 「…何やってるのよ、北斗」 「んあ? 夜宵?」 本来なら天井からぶら下がっているのだろうその神姫のCMとの間に、割り込んでくる見慣れた少女。 「…んあ、じゃないわよ」 肩の上に白いストラーフを載せた夜宵が、北斗のすぐ後ろに立っていた。 「…って北斗、神姫買ったんだ?」 テーブルの上で正座する明日香を見つけ、夜宵が視線を動かす。 「あ、ああ、そうだ!! 夜宵―――」 「―――マスター、自己紹介ぐらい自分で出来ます」 「え?」 明日香の事を説明しようとした北斗を遮り、明日香自身が立ち上がって夜宵の前に進み出る。 「始めまして。……私、マスターの武装神姫になりました、明日香です」 「……っ!!」 その名に、弾かれた様に硬直する夜宵。 「……お、おい明日香……」 「……………………北斗、あんた趣味悪いわよ……」 一瞬、気持ちの悪い物でも見るような目で明日香を見て、夜宵は一歩後ずさる。 「……姉さんはもう居ないって、言ったでしょ? それなのにっ!!」 「大丈夫ですカ、マスター」 夜宵の肩の上でその頬に手を置きながら、彼女の神姫、パールが主を気遣った。 「……帰る……」 「では、これで失礼させていただきまス。北斗。……それから、明日香さン……」 北斗を、そして明日香に視線を這わせてから、パールが頭を下げた。 「……北斗。……姉さんは、もう死んじゃったんだからね……。……もう、何処にも居ないんだよ……」 そう言い残し、夜宵は踵を返して小走りに走り去った。 「明日香、お前どういうつもりで!?」 「えっと、夜宵ちゃんには、しばらくナイショしようと思うんだよ……」 「…なんでだよ」 何か考えがあるらしいと悟り、北斗は声を落した。 「ほら、あのさ。少なくとも私が何で神姫になってるのか。その理由を説明できないと、信じて貰えないかもしれないんだよ」 「夜宵なら大丈夫だって!!」 「……でも、ずっとこのままじゃないかもしれないし……。夜宵ちゃんには、心配かけたくないんだよ……」 「……ぁ」 確かにその通りだった。 弥涼明日香は生き返った訳ではない。 例えば、神姫の素体に明日香の魂みたいなものが憑依したのだとしても、ずっとこのままという保証も無い。 或いは、次の瞬間に明日香の魂が消えて、飛鳥がただの神姫に戻る可能性だってあるのだ。 「だから、少なくとも。私がどうしてこうなったのかが分かるまでは、他の人には秘密にして欲しいんだよ」 「……ああ、分かった」 頷くしかない。 もしも、明日香のこの状態が長く続かないのだとしたら。 心の整理をつけた夜宵に、もう一度別離を味わわせる事も無いのかもしれない。 「……でもよ、そのまま明日香って名乗ったのは不味くないか?」 「だって北斗ちゃんには、咄嗟に別の名前で呼ぶような演技は無理なんだよ」 「……はい、出来ません。演技力ゼロです。そういう機転も利きません。ゴメンなさいでしたぁ」 「うん、分かれば宜し~んだよ」 にへへ、と笑うその顔が、生前のものと同じ事に、北斗の胸が少しだけ痛んだ。 -
https://w.atwiki.jp/pokecharaneta/pages/881.html
ヴァッフェドルフィンにジュゴンはどうかな? -- (名無しさん) 2010-12-18 09 30 23 オスしかいないポケモンは論外じゃないか -- (名無しさん) 2011-10-21 02 08 43 草案 フーディン:メリエンダ(スプーン型) 無理やりだが キュウコン:蓮華(九尾の狐型) レパルダス:アーティル(ヤマネコ型) ジュカイン:オールベルン(剣士型) エアームドorトゲキッス:ヴェルヴィエッタ(ビックバイパー型) -- (ユリス) 2016-03-04 22 30 18 草案 主題歌 OPテーマ ガラガラ:孤高のカタルシス EDテーマ ラブカス:か弱き十字架の愛 -- (ユリス) 2021-07-17 16 59 27
https://w.atwiki.jp/busosodo/pages/79.html
武装神姫達のソード・ワールド2.0【第2-0話】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm18534375
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/650.html
第漆幕 「READY STEADY GO」 華墨のここ二戦における敗因・・・それは俺のマスターとしての至らなさと、華墨自身の「猪突猛進なゴリ押し」スタイルにある 華墨は実戦経験がまだまだ足りない・・・にも関わらず、その身体能力でもって勝ちを続けてしまった事が、自身の弱点を見えにくくし、ひいては慢心さえ生んでいた 弱点を改良していき、より良い戦術を開発しなければ、勝利し続ける事は出来ない 例えば、俺はあの「シルヴィア」について殆ど何も知らないが、公式武装主義者が勝ち続けるには、多分ゴリ押しだけじゃ駄目なのだろうという事くらいは判る 別に俺は公式武装主義者になろうとしている訳ではない が、目下の所その「公式武装」もまともに扱えているのかどうか怪しい華墨に、山の様なカスタムパーツを託すというのは・・・かなり無理がある気がしてもいた 取敢えずは、今迄の華墨の戦闘データを見てみて、どういう戦術が良くて、どういうのが不味いのか、何が得意で何が不得手なのかを検証してみる事。今はそれが第一だろう (とは言ってもな・・・) 自慢じゃないが俺は戦術だとか戦略だとか、頭が要りそうな事はほとほと苦手だった (ええい、だからってやらない訳にはいかないだろう!華墨はこういうの、もっとやらない「たち」なんだから) それもまた、「二人で闘う」ことの一つの有り方だろう (まず注目すべきなのは華墨の「ゆらぎ」の賜物、この超抜の運動能力だろうな) 今迄華墨は、「ストラーフ(ニビルではない)」「マオチャオ」「ハウリン」「ジルダリア(?)」「サイフォス」と闘った事があるが、その運動能力・・・というか脚力は、ほぼ「ストラーフ」のパワードスーツと大差無いレベルに見えた その脚力が叩き出す瞬間速度は、全身に鎧を纏っていてもマオチャオやハウリンのそれを越える かなりの練習が必要だと思うが、半端な高度を飛んでいる相手になら補助装備無しで空中戦を挑む事すら可能だろう ただし、回避が下手糞というか、速度に頼って見え透いた突込みをし過ぎる所から、多分同じ相手とやると相当な高確率で敗れるだろうし、明らかにこういうタイプに強いであろう「エルギール」に勝利する事は不可能だろう (多分もうちょっと跳躍とダッシュを織り交ぜたトリッキーな動きをした方が良いんだろうなぁ・・・) 例えば、初めてヌルと闘った時に見せたあの壁蹴りの様な・・・だ 武器は今の所、「紅緒」に付属していた標準装備は一応全て使ってみたが、太刀が合っているだろう どのみち、運動能力を全面に押し出した戦いをするなら大き過ぎる武器は邪魔になる可能性が高い かといって、ナイフコンバットさせるには、密着戦のセンスが未知数だ。そもそも「紅緒」は、比較的大型の白兵武器を振り回すタイプなのだから、剣を手放させてもあまり良い事は無いように思える だが、太刀を主力に闘う限り、あの「エルギール」の「魔女の剣」は重大な壁になるだろう・・・あの剣は、太刀より遥かに間合いが広く、加えて長い武器を絡め取るのに向いている・・・ (もう少し強力な飛び道具があればアウトレンジから一方的に攻撃出来るんだがな・・・装甲が薄いから白兵戦相手じゃ強そうだが弾幕には弱そうだ) 結局華墨にとって最も攻略しなければならない第一の難敵があの魔女、エルギールである事は明白だった 「うぅ~むむむむむ・・・」 俺は頭を抱えて部屋でごろごろ転がるのだった 「・・・暇だな」 私はベランダで頬杖をつき、甲羅干ししている「ヴェートーベン君」をつついていた マスターが色々考え始めたのは良いが、どうもそういう作業に慣れて居ないのか、知恵熱が出る寸前の様だった かといって私は私で、普段は一人で色々考え込む癖に、いざ戦闘の事になると、何も考えずに突っ込んでしまえば良いと思っている(実際今でもそうだが)ものだから、結局マスターが考える事になってしまった様だ 少しずつ等身大の自分が見えて来たが、どうも私は、自己存在についてあれこれ悩む事と、何も考えずに体を動かす事が好きな様だ 「・・・また一人でバトルスペースに行こうかな・・・」 呟きつつ振り返る。そこでばっちりボナパルト君と目が合ってしまった 「・・・」 なんかまた激しく片目をぐるぐる動かしつつ片目はしっかり私を見ている・・・だから体の隅の方だけ色変えんな!気色悪い 「えぇいっ!相変らずでかい面してっ!言って置くが私はお前に負けた訳ではないのだからな!其処の所はっきり・・・うをっ!!」 またしても私の顔の横を凄まじい速度で通り過ぎるボナパルト君の舌・・・おのれ、爬虫類め・・・馬鹿にしくさって! その時、部屋のインターフォンが鳴る。同時に、これまた凄まじい勢いで駆け出すマスター 「はいはいっ!はいはいっ!!待ってましたっっ!!」 宅配されて来たものは・・・なんとも大掛かりな機械だった。結構な額を支払っているマスター 「へへっ・・・ようやく来たぜ」 「マスター、それは一体何だ?」 ごそごそと説明書を取り出してパソコンと繋ぎ始めるマスター 「所謂トレーニングマシンってやつさ。二個前の機種だから結構安く買い叩けたぜ・・・おっけい!多分コレで動く筈」 『ふいいいいぃぃぃ』とか間の抜けた唸りを上げながら起動するトレーニングマシン。無骨なアクセスポッドが大袈裟な蒸気を上げて開く・・・なんか微妙に入りたくねー 「さぁ華墨?カモ~ン」 渋々・・・という顔だけしてポッドインする。入ってみれば槙縞玩具店のアクセスポッドと大差無いな 『実際のリーグで使われてるのと殆ど同じステージが幾つか入ってるっぽいな・・・取敢えずこの「ゴーストタウン」とかいってみるか』 画面を切り替える度に『ぶひいいいん』とか一々音がする仕様を何とかして欲しい 切り替わった世界、出現するダミー神姫 「ふっ!」 機械に対する不満は幾つかあったが、こうやってバトルが出来る事自体には不満は無い・・・むしろ望む所だ 『んじゃぁ俺ちょっと出てくるから、その間に「慣らし」やっといてくれ』 「応!」とだけ応えて、私は手近のダミー神姫との殺陣に没頭し始めた 俺が帰って来た時、華墨は新しい相手と闘い始めた所の様だった。それを邪魔しない程度に、「買って来たモノ」をサイドボードに放り込む 新しい相手は「アーンヴァル」か・・・華墨が今迄闘った事がなく、そしてもし「エルギール」を下したら、その後最も大きな課題になるであろう神姫だ 上空から距離を保ったまま強烈な砲撃を繰り返すアーンヴァルに、華墨は大いに攻めあぐねている様だった 丁度良い 「華墨!今からサイドボードを送るから、巧い事ソイツでなんとかしてみろ。いくぜ!?」 さぁ行け、モデルPHCハンドガン「ヴズルイフ」!!華墨の可能性を俺に示せェェ!! たかだかボタンを一個押すだけに無駄に気合いを込めて、華墨の左手に大型リボルバーを転送する しっかり握り締める華墨、そして 『おおおおおおおおおおおおおおォォォオ!!』 ハンドガンを握り締め、傾いたビルの壁面を駆け上がる華墨。そうだ、それだ!お前にもし魂があるなら・・・ 跳躍する華墨。無論、実際に「飛んで」いるアーンヴァルに、翼無き身では届く筈も無い だが今の華墨には俺が与えたもう一つの剣がある・・・!やってみろ、華墨・・・お前の力を 「お前の力を見せてみろおおおおおぉぉぉォォ!!」 天使は、堕ちながらバーチャルの空気に溶けて消えて行った・・・ 神姫が人と同じ心を持ち、その身に燃える魂が有るならば・・・華墨のその魂の名は「闘志」に他ならないだろう 多分華墨は、良くも悪くも「武装神姫」を体現しているのだ プログラムされたものでありながら、ひとのそれと実質は変わり無い感情。機械の体に、熱い魂。 多分俺が抱え、悩んだあの葛藤すらも含めて、神姫は神姫足り得、華墨を「俺の神姫」として扱うならば、その全てを飲み込んでやらなきゃならない・・・ 人でもあり、機械でもある。玩具であり、パートナーでもある その、一見背反するもの全てがブレずに、ひとつの形として存在しているのが 「武装神姫」・・・人工の戦女神達なのだ 非常に軽いブレーキ音が槙縞玩具店の表に響く 待ち兼ねていた様に、皆川彰人は店の前に立っていた 「おかえりなさい西さん。大会はいかがでした?」 エレカのドアから電気盲導犬。それに引かれて女性が一人 「ええ・・・なかなか良かったようです。この子もかなりの刺激を受けたようですし・・・」 その女性の後から 堂々とした仕草で蒼い鎧姿がゆっくりと降りて来る 「有り難い・・・助かりました、奥様」 「もう、奥様はよしてと言っているでしょう?」 身長15センチの筈が、圧倒的に大きく見える威厳を備えた「サイフォス」 狗の頭部の様にカスタムした兜を脇に抱え、濃紺のマントを羽織った金髪の神姫・・・ 「おかえり・・・『クイントス』・・・」 それが槙縞ランキングの女王「クイントス」帰還の際のやり取りだった 剣は紅い花の誇り 前へ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2301.html
アスカ・シンカロン01 アスカ・シンカロン02 アスカ・シンカロン03 アスカ・シンカロン04 アスカ・シンカロン05 アスカ・シンカロン06 アスカ・シンカロン07 アスカ・シンカロン08 アスカ・シンカロン09 アスカ・シンカロン10 アスカ・シンカロン11 アスカ・シンカロン12 アスカ・シンカロン13 アスカ・シンカロン14 アスカ・シンカロン15 アスカ・シンカロン16 アスカ・シンカロンの登場人物共 ※激しくファンタジー要素が入ります。 武装神姫の世界に魔法とかありえないという人にはちょっとアレな内容かもしれません。 のっけからベビーな展開、どんな話に成るか楽しみなので、何も考えずに読ませて貰いますね、頑張って下さい -- ナナシ (2011-01-02 08 54 35) 神姫にはファンタジー要素が足りないと常々思っておりました。 書いてくださってありがとうございます。 続きを楽しみに待っています。 -- にゃー (2011-01-02 23 19 29) ナナシさま、にゃーさま。コメントありがとう御座います。 ご期待に添えるよう頑張らせていただきます。 -- 名無しさん (2011-01-03 20 17 21) きたキタきたキタ〜不思議展開、こう来ましたか、どんな扉が開くか楽しみです -- ナナシ (2011-01-04 05 21 25) こんな感じで開きましたが如何でしょうか?>にゃーさま。 途中で真相に気づかれずにヒントだけ出すのが難しいです。 と言っても推理要素は皆無ですが…。 -- 名無しさん (2011-01-06 00 14 13) 死んだ人が違う、位の不思議が起こっても変じゃ有りませんね、いいですねぇ〜この引き込まれる感覚 -- ナナシ (2011-01-06 03 23 20) 方向性が間違っていないだけに、それ以上深く考えないで~。>ナナシさま 現実にはありえないような事がトリックですので推理モノではないですよ? -- 名無しさん (2011-01-07 00 40 33) 06読ませていただきましたー なんだかすごい展開にw -- 璽儡 (2011-01-07 00 51 16) ハ〜イ、頭空っぽにして楽しもうと思います、それにしても書けるだけで凄いのに、このハイペースには脱帽です -- ナナシ (2011-01-08 14 22 45) 弥涼さんヤンデレも行けますので!>璽儡さま 一応エンディングまでに起こすイベントや必要なセリフを箇条書きで先に纏めてあります。 ですので話しに行き詰ったら章を変えるという方針で行くと早いかもと試している最中です。上手くいけば1月中に終わるんじゃないかと想像。>ナナシさま -- 名無しさん (2011-01-09 00 07 30) 筋書等、材料は既に下拵え済みでしたか、それでも凄い速さですなぁ、初戦からリアルバトルとはやりますなぁ、撃沈後に「バーチャルだから大丈夫なんだよ〜」って来ると思ってました(笑) -- ナナシ (2011-01-09 02 33 07) 命懸けでバトってるのはこいつらだけで、他はBladeさんの漫画みたいに頭身低めの神姫たちが目を(><)こんなにしながらポカポカやってると思うので初戦実戦でも問題ないです。…そもそもコイツ等、中身チートですし。>ナナシさま -- 名無しさん (2011-01-10 00 27 48) も、もう8話ですか、早いのです! ヽ(≧∀≦)ノキャー なんてはしゃぎつつガチバトルに巻き込まれる神姫達・・・カワイイのです -- nya- (2011-01-10 00 53 17) たぶんここらが折り返し。ひぐらしなら目明し入ったあたりですかね? ヽ(≧∀≦)ノキャー 神姫たち。 きっと爆発に巻き込まれてコロコロ転がったり、アフロになったりしてる筈。 >一個上の方はにゃーさまですかね? -- 名無しさん (2011-01-11 00 10 53) アスカシンカロンのメニューへの追加、ありがとう御座います。 -- 名無しさん (2011-01-11 00 22 27) 楽しく読ませてもらってますー ただちょっと展開が急すぎてついていけてないかも…? -- 璽儡 (2011-01-11 01 27 42) nya-はにゃーです。 変換し忘れまして、失礼しました。 -- にゃー (2011-01-11 21 12 38) 携帯だと01の斜め下に09が入ってます -- 名無しさん (2011-01-11 21 44 10) >璽儡さま。 箇条書きプロットの弊害ですかね? 起こすイベントが決まっている分脇道に逸れないので早く書ける半面掘り下げは不足するようです。 もとより文章力が不足しているのだとすると早急な改善が不可能なので。 新キャラ(悪友)の登場が唐突過ぎるのはある意味仕様ですのでお目こぼしを。 あとは最終話でしか出て来ないですが…。 -- 名無しさん (2011-01-13 00 10 10) >にゃーさま。 了解です。 にゃーでもnya-でもお好きな方でどうぞ。 (実は密かに15cm程度の死闘のTOPページのカウンターに感銘を受けたりしてます) -- 名無しさん (2011-01-13 00 13 29) >名無しさん 携帯でのチェックありがとう御座います。 私の携帯はネットに繋ぐと2分ほどでバッテリーを使い果たすヘタレなのでチェック不能でした。 この手がダメとなるとどうしたモンでしょう? ページが長くなっても害が無いなら気にしなくて良いですかね? -- 名無しさん (2011-01-13 00 16 28) 長くなっても良いと思いますよ、私の場合携帯がメインなのですが(見た時には検証済みだったので書きませんでした)長さは気に成りませんでした -- ナナシ (2011-01-13 01 26 04) >ナナシさま。 携帯で問題ないなら長くなるけどこのまま下に繋げます。 あと5話程度ですので最後までお付き合い下さい。 -- 名無しさん (2011-01-14 00 23 17) 量○テ○○○トネタだったんですね(ネタバレに配慮して伏せ字 -- 林田 (2011-01-17 14 53 36) >林田さま。 その通りでございます。 四次元とか時間移動とか匣猫とかの哲学とSFの両方に繋がりそうなネタは大好きですゆえ。 -- 名無しさん (2011-01-18 00 36 06) 確かに今までに無い展開、こう言うのも有りですよねぇ……あれ?片方が消えたって事はつまり(これ以上野暮は言いますまい、座して幕を待つとしますか) -- ナナシ (2011-01-18 01 55 21) 種明かしと同時に明かされる、著者の正体! アルティメットビックリ! -- にゃー (2011-01-18 21 43 32) >ナナシさま。 大丈夫!! そういう時のための○様です。 -- 名無しさん (2011-01-21 00 45 32) >にゃーさま。 済みません、隠してた訳じゃないんですよ? 編集ログ見ればバッチリALC名義で編集されてますんで。 ただ、名乗り忘れた事に気づいた頃には既に名乗りだし辛く…。 -- 名無しさん (2011-01-21 00 47 28) 完結おめでとうございます。にゃー様と同じく、著者の正体にアルティメットビックリです(^^; ファンタジーなストーリーでしたが、違和感もなく綺麗にまとまっていて、さすがです。あちらの作品の続きも期待しております。 -- トミすけ (2011-01-23 23 20 43) 最初のほうの重~い話からどうなることやらと思っていましたが、ああ、ハッピーエンドほど素晴らしいものはありません。 乙です! -- にゃー (2011-01-24 00 22 05) こう来ましたか、最後まで美味しく頂かせてもらいました、願いを小さな感謝にする所が又いい、ごちそうさまでした(合掌) -- ナナシ (2011-01-24 21 41 02) >トミすけさま。鋼の続きも書きますが、もう少しお待ちを。 >にゃーさま。ですよね~、やっぱハッピーエンドの方が後味が…。 >ナナシさま。 お粗末さまでした。最後までお読みいただいてありがとう御座います。 -- 名無しさん (2011-01-25 23 03 56) 名前 コメント 本日の参拝客 - 人。 集った信仰心 - 礼。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/198.html
眼前に神姫達が迫る。始めた作業は継続しつつジェネシスへ説明を始める。 「お前の攻撃データを改竄した。攻撃を当てればそこからウイルスコードが侵入し、 俺達とリンクする」 「相手のコンピュータからは消えたように見える筈だ。コレで洗脳から解放できる。 一時凌ぎだけどな」 めまぐるしくキーボードを叩きながら、ジェネシスへ指示を下す。 「了解です。」 「それと、一機一機回収してる時間の余裕がもう無い。リンクを経由して一緒に 連れ出す。その為には機体を機能停止させる必要が有る」 「人間でいう鳩尾の位置だ。エネルギーラインの集中位置がある。 バイザーにデータ送るぞ。ここを切断すれば無傷で神姫を止められる。 いいか、一撃でここだけを刺し貫け」 ジェネシスのバイザーにヒットポイントの位置データを転送。 ジェネシスは位置を確認し頷く。 「安心しました。いつもの貴方で」 「凹むのは後だ。その話はするな」 「頼りにしてます」 僅かに笑んだ気配のある彼女の声が、緊張をほぐしてくれる。サンキュ、相棒。 数秒置かず、神姫達の只中へ突っ込む。 最初に襲い掛かって来たのは先程のハウリンタイプだ。 「ジェネシス。システムを近接戦闘に移行」 「了解」 可変アーマーが跳ね上がり、ハウリンを弾き飛ばす。 展開したアーマーがフレキシブルアームごと後方へ移動し、折り畳まれて スラスターウイングを形成する。尾部のアーマーがサイドに持ち上がり展開して サブウイングとなって…高速格闘形態へ。 ウイング内に仕込まれたサバイバルナイフをクローデバイスで取り外し、 その手に握り込む。 もう片方のクローでハウリンを掴み、こちらへ引き寄せて。 「大丈夫…痛くはしません」 ドッという鈍い音と共に正確にその胸をナイフで刺し貫く。 停止したハウリンを降ろせば、周囲を取り囲む神姫達。流石に数が多い。 クローユニットを180度回転して逆方向に装着したビームユニットからサーベルを展開。 同時にドラグーンを射出して駆け出す。 ジェネシス自身が前方の1機を、後方の6機を至近まで接近したドラグーンが討つ。 一応、ジェネシスのビーム兵器には全てエネルギーキャップを付けてある。 短時間ならどの兵器からでもビーム刃を出せるのだ。 そこへ降り注ぐ攻撃から倒した神姫を突き飛ばして、自らも上空に避ける。 「容赦ねぇな。ま、操られてるんだし当然か」 「だからこそ、これ以上彼女達が傷を負う前に止めねばなりません」 味方を倒されても躊躇無く攻撃を加えてくる神姫達。回避行動を取りつつ、その要領で 次々と撃破していくと例の巨大神姫が接近してくるのが見えた。 神姫達の迎撃をドラグーンに任せ、巨大神姫へと飛び立つ。 アレとの戦いに他の神姫は巻き込めない。 迫る巨大神姫に先制攻撃を掛ける。これでウイルスが効けば儲けモンだが勝算は薄い。 なぜならアレは恐らく… 「よぉ、Gさんよ。初めましてだなぁ?攻撃しても無駄だぜ? コイツはオレが直接操ってるからなぁ。サーバーには依存しねぇ」 巨大神姫の蛇の様な頭部。その目の部分が点滅し、音声を再生する。 装甲も今までの比じゃねぇのか傷一つ付いていない。 「やっぱ初めてか。オレが今まで潰した連中と比べて大分ザルいぜアンタ。 その分卑怯くせぇけどな」 皮肉たっぷりに言い放ち、巨大神姫を調べる。 神姫部分が露出してれば話は早いが…そう簡単には行かせてくれないか。 「何とでも言ってくれや。取引だ、Gさん。オメェこのまま俺達に捕まれ。 大事な神姫を壊したくないだろ?それに…」 巨大神姫の頭部カバーが開く。その中に組み込まれていたのはストラーフ。 …しかも見覚えのある、だ。 「コラン…」 苦々しく呟く。それは、オレが修理を頼まれたあのストラーフだった。 「何だ知り合いかよ?なら話も早いってモンだ!アンタが抵抗すればこのストラーフ、 タダじゃすまないぜ?」 「こっちも高い金掛けてこの戦闘用神姫を組んでんだ。ランカー神姫まで用意してなぁ。 こんなトコで壊したくはねぇのよ」 人質ってワケか。どこまでも腹の立つヤロウだ。 このデカブツを破壊して頭部から彼女を救い、彼女にダメージを与える。 直接接触しない限りは攻撃は無駄。 …手が無いわけじゃねぇが。 (ジカンヲカセゲ) ジェネシスのバイザーにメッセージを送信する。 「…アンタの目的は?」 男に話しかけながら、キーボードを打ち続ける。デカい入り口を開ける為に。 ジェネシスも無言のままウイングをアーマーに変形させて防御姿勢を取る。 男の神姫がジェネシスをいたぶる様にその巨大な身体をぶつけて攻撃を開始した。 まるでお手玉の様に中空で攻撃を受け通けるジェネシスの顔が悔しさと痛みに歪む。 「目的ぃ?目的なんざ金に決まってんだろ!Gの神姫とソレをヤッた神姫となりゃ、 とんでもない額で売れるぜ!ハハハッ」 「手間ぁ掛けやがって!頂く前に少し遊ばせてもらうぜ、見敵必殺の神姫サンよぉ!」 「下衆野郎が…」 「口の利き方には気をつけろよ、Gさん。アンタの神姫が痛い目に合うぜ?」 巨大神姫の尾のブレードが、ジェネシスを地面に叩き付ける。 地に伏したジェネシス目掛けてそのブレードが何度も何度も振り下ろされた。 「大した事ねぇなぁ?おっと、手が出せないんだっけか、悪ぃ悪ぃ」 下品な笑い声を上げ、男が楽しげにこちらを挑発する。 そして巨大神姫が、その身体で蛇が獲物を絡め取るようにジェネシスに巻きつき、 締め上て来た。 「ぐっ…」 苦痛に耐え、呻き声を上げるジェネシスを見て、男は満足げに言い放った。 「オラ、Gさんよ。アンタはこの神姫を置いてさっさと消えな。これに懲りたら少しは 利口な生き方ってモンを覚えるんだな」 …この手の手合いは自分の優位を実感した瞬間、どうしようもなく隙が出来る。 小悪党の不文律か。 目の前にちらついたお宝に目が眩み、オレを無力と思ったのが運のツキだ。 終わったよ、準備。 「なぁに。利口になるのはアンタの方さ、小悪党!」 最後の構文を書き込み、エンターキーへ指を叩き付ける。 サーバー世界の雲に穴が開き、新たな入り口が開く。 「ジェネシス、待たせたな!やっちまえ!」 「アーマーユニット、オールパージ!」 オレの呼びかけに応えたジェネシスが叫ぶ。 アーマーが強制排除され、拘束を吹き飛ばしたその勢いのまま天へと跳んで。 同時、天空より飛来した戦闘機に飛び乗った。 「な、なんだこりゃっ!?」 状況を理解していない男の叫びが空へと木霊していた。 ジェネシスが乗っているのは、彼女の最強の剣だ。アムドライバーシリーズの ネオボードバイザー、通称ソードダンサー。 そいつの推進系とコネクタを改造し、銀に塗ったMMS用随伴戦闘装備。 その名は、ソードダンサー改「リボルケイン」 「モードブリガンディ!」 ジェネシスの咆哮に合わせてリボルケインが変形する。ジェネシスをその身に納め、 巨剣を構えるその姿はまさに剣帝。 「必殺!リボルクラッシュ!」 雄叫びと共に全推進系を使い、超高速で相手を貫くリボルケインの必殺技が巨大神姫の 首とその下を切り離す。 吹き飛ぶ頭を掴み、頭部カバーを弾き飛ばして、ジェネシスを分離。 ここまでを一呼吸で行なう。 リボルケインから分離したジェネシスがその内部に眠るコランを引き剥がし 胸を貫いた時、男はようやく現状を認識した。 「なっ!なぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」 訂正、展開に追いついてないわ。このオッサンの頭。 「チェックメイト。とでも言えば通じますか。貴方の負けです、犯罪者さん」 コランを抱くジェネシスが、再度飛行形態へ変形したリボルケインの上で勝利宣言する。 「あ、ありえねぇぇぇぇっ!?」 叫ぶ男。負けた事は認識したらしい。ともあれ。 「ジェネシス、アーマーパージはキャストオフだ。基本だぞ?」 台詞について突っ込むオレ。 「ああ、気付きませんでした。失礼」 和やかに返すジェネシス。 「何の話じゃぁ!おまえらぁぁぁぁっ!?」 興奮状態のオッサン。 「何だ!?何をしやがった!?改造ボディのランカー神姫の反応を超える動きだと!? どんだけカスタマイズしてんだ!?」 大声で捲くし立てるオッサン。オレが皮肉の一つも言ってやろうと口を開いた時、 先にジェネシスの声が耳に入った。 「武装神姫は一人で戦っているんじゃない」 「信じ、信じてくれるマスターと共に戦うからこそ、スペックだけでは測れない戦いが 出来る」 「共に支え、胸を叩き、背中を押す。その声と心が共にあるからこそ、戦える」 「神姫をパーツとしか思わず、その心を、誇りを汚す愚か者になど… 武装神姫は負けない!恥を知りなさい!」 …言う言う。オレの心もすっとした。流石は俺の相棒様だ。 「くそっ!人形風情が何を人間様に説教たれてんだ、コラッ! 勘違いしてんじゃねーよ、機械の分際でよぉッ!」 男も負けじと吠える。台詞まで小悪党だ。どこまでも救えねぇ。 「そんなんだから負けんだよ。お前が言う機械にも解る事が解んねぇんだから、 お里が知れるぜオッサン」 嘲笑を込めて言ってやる。そして止めに一言。 「ま、負け犬の遠吠えってヤツぁいつ聞いても滑稽だな。二度と出てくんなよ三下、 出てくるたびにこうなるぜ?」 「うがぁああああああっ!!!くそっ!こうなりゃデータなんぞ関係ねぇ!死ね!!」 そこで男の通信が唐突に途切れる。いや…通信だけではない。 世界が、崩壊を始めていた。 遥か彼方から、凄いスピードで世界が崩れ、ただの無機質なデジタルデータの流れが 剥き出しになっていく。 「あのオヤジ、ヤケになってサーバーの電源無理矢理抜きやがったな」 この現象も悲しいかな経験済みだった。ヒステリー後の行動なんてそんなに多彩な パターンは無いらしい。 「UPSじゃ持って数分か。データリンクしといてよかったぜ。ずらかるぞ」 「マスター、リィリィを回収しないと!」 慌てて言ってくるジェネシスに、ニヤリと笑いながら告げてやる。 「最初にリンク張っといたよ。問題ナシ」 「そうですか、良かった…」 胸を撫で下ろすジェネシス。うん、なんか今オレ出来る男っぽくね?はっはっは。 「マスター…この捕縛プログラムはどうなるんでしょう?」 出口へ向けて神姫達を送り出しながら、ジェネシスが聞いて来る。 「電源抜いたくらいで壊れはせんだろ。UPSも動いてるし、後は警察がやってくれるさ」 「そうですか…」 俯くジェネシスが、パージしたアーマーを身に纏う。はて?何で今更アーマー着ますか。 「マスター確か今の私の攻撃データ、ウイルスが仕込んであるんでしたね?」 「…おう。ええと、ジェネシスさん?」 声音が低い。これはなんか怒ってる時の声だ。 「私が攻撃すれば…壊れますかね、この不愉快なプログラム」 にこやかに笑みつつ、屋敷を指差す。うひぃ。 「いや、時間無いよ?神姫達の転送も終わったしさっさと離脱しないと…」 「マスター…Gという名の由来を聞いた時、機械の英雄達の称号とおっしゃいましたね。 そして、私の装備にはGの遺伝子が受け継がれていると」 オレの呼び掛けを遮り、ジェネシスが語る。 ああ、確かに。 ガンダムもグレート合体もゴジュラスもギャラコンも、ロボットヒーローにはGの名は 付き物だ。 彼らの正義にあやかる為に、オレはこの稼業を始めた時Gを名乗った。 「この状況を打破出来るGを、私は知っています。そして、その力は私にもある」 再びアーマーが変形を始める。近接戦闘形態へ。そして、さらにウイング内に仕込んだ そのGのキャノンが、両腕のビームユニットが、腰のヴェスバーが。そして周囲には ドラグーンが。全砲門がプログラムへ向けてその牙を剥こうとしている。 「そのあまりの力から、やりたい放題…フリーダムの名を冠した伝説のG! その力を今こそ!!」 「いや、その説明俺の主観だし!証拠のプログラム壊したらたっちゃんに怒られ──」 慌てて止めようとしたオレの言葉をも吹き飛ばすように、ジェネシスの ハイマットフルバーストが電脳世界に止めを刺す。 白く染まり崩壊するその世界の輝きは、なんだか色々な物を忘れてしまいたくなった。 意味は無いけど南無。 「畜生、畜生畜生ッ!」 見事にGに出し抜かれた主犯格の男は、怒りをコンピューターにぶつけていた。 「あ、アニキ、落ち着いて!マジでデータが壊れちゃいますよ!」 慌てて取り押さえるその部下達。 「どうせGのヤロウに持っていかれた後に決まってるだろが!畜生、あのオタク野郎、 覚えてやがれっ!!」 力任せに蹴り飛ばされたテーブル。その上に乗っていた目覚まし時計が壊れ、 時を止めて転がった。 午前1 00時。 同時、インターホンが鳴る。 「誰だ、こんな時間に…?」 部下の一人がドアを開ける。其処に立っていたのは、黒手帳を示した男だった。 「…警視庁公安MMS犯罪担当3課、地走 達人。階級は警部だ。お前たちを 電子取引法違反、違法賭博、器物強奪etc等の容疑で逮捕する。コイツが令状だ」 あまりといえばあまりの事態に、男達が目を白黒させる。そして数秒。 「テ、テメェーッ!」 何がテメェなのか解らないが、パニック状態の男達が襲い掛かる。 手帳を仕舞う余裕すら見せ、地走警部が後ろに下がり一人目に当て身投げを行なう。 身体を半回転させドアを塞ぐように相手を投げれば、それに二人目三人目が 巻きこまれて倒れ。 「手間を掛けさせるな。公務執行妨害まで付くぞ?」 ドスの効いた声で告げる。警部というよりは殺し屋のようなその声に、主犯格の男が 腰を落とし…逮捕劇はあっけなく幕を閉じた。 「警部、証拠品の搬入先なんですが…」 「ああ、データ解析はKMEEの今米さんに頼んである。そっちに運んでくれ」 「はっ」 敬礼して持ち場に戻る若い警官を見送り、地走警部は携帯端末を操作した。 事件から数週間。結局あの事件は新聞の三面記事にすら載る事無く、静かに終息を迎えた。 それだけ、今の世の中神姫犯罪が多いってコトだろう。ブームの暗黒面だ。 だが、事件の当事者には良くも悪くもその記憶は残り続ける。 例えば、あのストラーフ使いの少年の様に。 ・ ・ 「本当に、有難う御座いました」 少年が深々と頭を下げる。その腕には意識を取り戻した彼のストラーフ、 コランがしっかりと抱かれていた。 「おう。ホント苦労したぜ。修理代はずんで貰わねぇとな」 カウンターに両腕を預け、軽口を零す。 「はい、貯金、全て下ろして来ました…いくらでもお支払いします」 「ほぉ、そいつはいい心がけだ。そんじゃ、コイツの代金を払って貰おうかい」 神妙な面持ちの少年に請求書と紙袋を手渡す。 請求書を読み上げた少年が不思議そうに顔を上げた。 「えっとこれ保守部品ですよね…?ハードの故障だったんですか?」 「いんや。正真正銘ソフトの問題」 一拍置いて言葉を続ける。 「ホント大変だったんだ。二度とゴメンだ。つーわけで二度目は無いぞ少年。 今度同じ事が起きても修理はしねぇ」 「だから、そのパーツでしっかり整備して頑張んな。強さってのを見つめなおす為にも」 「店長さん…」 一言そう呟く少年に頷いて見せる。 「裏にゃ裏の意味がある。否定はせんよ?でも、あそこは…なんつーかな、 普通の武装神姫にゃ似合わない場所さ。解るだろ」 「はい…」 「…だから、お前さんの求める強さはあそこには無ぇ。人に頭を下げるぐらい 大事な神姫なら、日の当たる場所で一緒に歩いてやんな」 少年が、少し俯いて無言になる… やがて、顔を上げた少年は「色々、お世話になりました」とだけ言って、会計を済ませた。 「きっと、彼女と胸を張ってまた会いに来ます」 「楽しみにしてるよ。有名になったらウチの宣伝もしてくれ」 手を振り見送る俺に何度も頭を下げながら、少年は帰っていった。 ・ ・ ・ 「カッコつけすぎたかなぁー」 思わず思い出して背筋が寒くなる。 クセとはいえ、クサ過ぎるだろうあの台詞は。病気だ。 「でも、カッコよかったですよ」 横から声を掛けるジェニーを見る。教室も終わり定位置…レジ横の特製クレードルに 鎮座する大明神様は、レジ兼用のデスクトップ端末からネット中のご様子だった。 「いや、何も言ってないんすケド」 「どうせ自分の勢い任せにいっちゃった台詞でも思い出してたんでしょう?」 恐る恐る聞けば、実に的確な突っ込みが返って来る。 エスパーか君は。 「長い付き合いですから」 「いや、モノローグを予測して答えるな、マジ怖い」 そんな遣り取りの後、ジェニーが端末のモニタを示して見せた。 「頑張ってるみたいですよ?コランさん」 見れば、強敵相手に善戦し、僅かながらポイントを上げたコランの姿が映し出される。 「ま、元々腕はよかったんだろし。頑張って欲しいねぇ」 ニヤケる顔を見られないようにジェニーとは逆の方を向く俺の耳に、 彼女の僅かな笑い声が聞こえた。くそう。 「で、私のボディは何時買って貰えるんですか? そろそろ今米さんから報酬が届く頃では?」 「そんな予定はありません」 定例の突っ込みに定例の言葉を返す。 「…電話してたのは聞いてます。報酬、私にも権利はあると思いますけど?」 ジェニーの冷静さを維持しようとする声に、誤魔化すのはムリと判断して真相を告げる。 「あのなぁ、いくらなんでも現金なんて貰えるワケないだろ。企業的に」 「というわけで、12月発売の3機種各6カートン。コレで手を打った」 「な…な…なっ?」 「ウチの店の規模じゃ破格の入荷数だぜ。震えるぜハート、燃え尽きるほどヒート…」 「じ、じゃあそこから一体素体を都合して下さいよ!」 「店の商品に手を出すなんて商売モラルがなってないぜ、ジェニーさん」 チッチ、と指を振る俺をジェニーが睨み付ける。心なしか肩が震えて居るような。 「この、金無し!根性無し!甲斐性無し!うああああん!マスターの馬鹿ーっ!」 走り出したいのかクレードルから分離しようと身を捩るジェニーさん。 首しか動いてないよジェニーさん。 「まぁまぁ…大明神様落ち着いて」 「ああっ!もうっ!解りました、それならこっちにも考えがあります!」 こちらをキッと睨むジェニー。やおら表情を作ってもじもじと呟く。 「もう…夏彦さんの意地悪」 グハァッ…!大ダメージを受けた俺は思わず突っ伏した。 「やめろ…っ!オレは小学校中学年以来、女に名前で呼ばれた事が無いんだ!」 早鐘の様に鳴り響く胸を抑えて何とか立ち上がる。くそう、エグい手使いやがる。 「ふふ…女扱いは悪い気しませんけど、許しませんよー。夏彦さ~ん♪」 「ぐぁぁぁっ!黄色い声を出すなぁっ!?」 「純情ですねー、夏彦さんは」 「謝る、謝るからヤメテーッ!?」 そんなコントを聞いてか聞かずか、自動ドアを開いて入ってきたお客さんが遠慮がちに 声を掛ける。その肩には見覚えのあるマオチャオタイプが手を振っていた。 「あの…ここ…武装神姫のお店、ですよね…?」 オレもジェニーも、すぐに切り替えて営業スマイルを浮かべる。 一瞬だけ視線が合って、それがお客さんの方を向き… 『いらっしゃいませ!』 ホビーショップ エルゴは、今日も明るく営業中である。 NEXT メニューへ